あるパン屋さんを支援していたときのこと。
「6月くらいから売上げが落ち始めて、10月くらいからまた伸び始めるんですよ。毎年そうだし、同業他社も同じようです。パン屋っていうのは、そういう商売なんです。暑くなってくるとニーズが減るんですかねぇ。」と社長さんはおっしゃる。しかし「はあ、そんなものですか」と簡単には引き下がらないのがコンサルタントというもの。現象的にはそうなのだろう。なにも社長さんが嘘を言ってとは思わない。それでも社長さんの発言は彼の『認識』に過ぎず、その認識が『事実』であるかどうかは別問題だ。
こういう場合、諦めて何もしないか、広告宣伝に頼りがちだが、どちらも正しくない。正しくは、『何が起こっているのか』を調査し、『打開策があるのか、ないのかを検討』することだ。
そこで、まず売上データを分析すると、客単価はほぼ変化しないが、客数が減少するという事実がわかった。客数は延べ人数だから、おそらく来店頻度が落ちているのだろう(仮説)。ここで『どうしたら来店を促進できるのか』と考えてはいけない。考えるべきことは『なぜ来ないのか』である。
そのために『ニーズがあるのかどうか』を検討しなければならない。ニーズがなければ広告宣伝しても意味はない。従業員さんに
「6月になるとパンが嫌いになると思うか?」と尋ねると、冗談を言われたと思ったのか、笑いながら
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」と答える。
「それじゃ、どうして買いに来ないんだ」と追い打ちをかければ、
困ったような表情で「なんでですかねぇ」。
しばらく禅問答のようなやり取りを続け、やっと辿り着いたのは、パンを嫌いになるわけではない、暑くなって食欲が落ちる時期に、喉越しのよくないパンを食べる気にはならないだろう、ということ。つまり、潜在ニーズはあるが、顕在化を妨げる要因があるということだ(仮説)。
次に『顕在化を妨げる要因をどのように除去するか』である。また従業員さんに尋ねる。
「食欲がないからといって、喉越しのいいソーメンばかり食べていたら体力が続かないね。食欲はないけれど何かガッツリ食べなければならないとき、みんな何を食べる?」
「焼き肉? ラーメン? あとは・・・」
「それも悪くはないけれど、ファミリーレストランはどうしてる?」
やっと出た。「カレーですか?」
カレーは魔法のメニューだ。食べる気がなくても、隣からカレーの匂いがしてくると、つい食べたくなる。
「カレーパン・フェアをやろうか。揚げカレーパンじゃないよ。とりあえず試作品をたくさん作ってよ」。
最後は『売るための仕組みづくり』
セコメントをする